そしてバトンは渡された(文春文庫) [ 瀬尾まいこ ]
母親を幼い頃になくした優子とその周りの血の繋がらない家族のお話です。
元々、作者である瀬尾まいこさんの大ファンな私。
「おしまいのデート」「卵の緒」「強運の持ち主」「幸福な食卓」
どれも普通とは言えない家族が
暖かく、他のどの家族よりも温かい家族を築き上げているのが
とても繊細に表現されている作品で、大好きです。
今回、永野芽郁さんと田中圭さんで映画化されるということで急いで読みました。
30歳という歳でこの作品を読んで、
家族を作り上げるというものへの覚悟や家族への向き合い方など、大人からの視点が丁寧に描かれていてボロボロ泣いてしまいました。
以下、ネタバレとなります。
優子の母親は亡くなった母親と梨花さんだ。
梨花さんは凄い。
愛嬌があって、行動力がある。
ピアノをならいたいと言った優子に対して、何とかするから!と言いきってしまう。
なんて強い人なんだろうと思う。
また、優子の為に必要だと思ったら、結婚までしてしまうところが、母強しと感じた。
血の繋がりなんて関係ないのだ。
そして、何も知らない人からしたら複雑な家庭で育った優子が真っ直ぐ育っているのも凄い。
そして、最後の育て親の森宮さんである。
勉強ができる人で、梨花さんからの優子を、託された人。
不器用ながらに精一杯優子のために父親になっていく。
その森宮が弱音を吐く部分がある。
優子のそれまでの親、遺伝子が繋がっている水戸さん、行動力のある梨花さん、経済力のある泉ヶ原さんに引け目がある。
大人も色々悩むのである。
でも、35歳の遊びたい盛りの大人が血の繋がらない娘の父親としてのポジションを真剣に心配しているってとこが、人の良さがにじみでていて好きである。
血の繋がりなんてなくてもきちんと親になることが出来るのだ。
もちろん難しいことではある。
しかし、今、少子化の日本にとって
勇気が貰える小説のひとつだと感じた。
私はまだまだ、選択を間違える。
けど、相手を大事に思って選択を下す癖をつけることは出来ると思った。
瀬尾さんの小説は心が暖かくなるので大好きです。
大好きな言葉、1部抜粋です。
「優子ちゃんと一緒にいるととっくの昔に過ぎ去ったはずの8歳の生活をもう1回体験できるんだもん。子供がいないと出来ないことっていっぱいあるって知った。」
「優子ちゃんの母親になってから明日が2つになったって。自分の明日と自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日がやってくるんだって。親になるって未来が2倍以上になることだよ。」
「娘の人生を作って欲しいって言われたんだ。自分じゃない誰かのために毎日を費やすのってこんなに意味をもたらしてくれるものなんだって知った。」
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